親分 おい、お前、あの女捕まえて来い
子分 えっいやっすよ!依頼人でもないのに
親分 俺の帽子、お前が責任持ってとり返してこい。…俺は煙草を買ってくる
子分 そ、そんなぁ
親分 ガタガタぬかすな!さっさと行け!
子分が走り出したのを確かめ、親分はける。子分が足を止めて振り返る頃には親分の姿はない。
上手より博幸走って入り。きょろきょろ辺りを見回しながら、背を向けている子分にぶつかる。
子分はぶつかった衝撃で尻もちをつくが、博幸はよろめいて肩を押さえるだけ。
博幸 うわっ!
子分 おい、前見て歩けよ、兄ちゃん!
博幸 いてて…すいませんでした。あの、急いでるんで
子分 急いでんのはオレだって一緒だよ。たく、一度だけじゃなく二度もぶつかられて
…あーぁ、ついてないなぁ
博幸 あのっ、人を探しているんです
子分 オレだって探してるよ!
博幸・子分 白いワンピースの髪の長い、ちょっとどころかかなり頭のおかしい女
子分 …え?
博幸 会ったんですか?どこで?いつ?どんな風に?
子分 会ったって言うか、絡んだって言うか絡まれたって言うか
博幸 会ったんですね!
子分 お、おう。会ったよ。それが?
博幸 朝から探しているんです。早く見つけないと…また何をしでかすか
子分 もしかして、脱獄囚とか?そういうオチ?
博幸 いやいや、そんな危険人物ってわけじゃ…ある意味危ない人ですけど、ただの一般人ですよ。
ハッキリ言えば身内の一人なんですけどね。
別に会っただけで噛みついたりとって食べたりしないと思いますよ
子分 ふぅん。あ。いいこと思いついた。オレって頭イイ〜
ね、ね、その女さ、探すの手伝ってあげても良いぜ?
博幸 本当ですか?
子分 おう、困りごとがあれば何でも解決ってのが俺らの役目で仕事なんだ!
博幸 …もしや、貴方たちはこういう方たちじゃないですよね?(頬を指でなぞるヤクザの暗喩)
子分 違うよ。そこいらのヤクザとかチンピラと一緒にされちゃ困るなぁ。オレと親びんは何でも屋なんだ!
子分と博幸の会話し続けている中、親分入り。二人は気付かない。
親分は二人の様子をうかがいつつ、再び声をかけるタイミングが来るのを待っている。
博幸 何でも屋?
子分 そう、生まれてから死ぬまでのお困りごと、なんでも解決。今ならハートフル料金サービス中!
解決しなかった依頼なんて一個もないんだぜ。親びんはなんだって出来ちゃうんだ。
大物政治家のワイロ疑惑を明らかにしたしアメリカ大統領のボディガードをしてたことだってあるんだ!
今までだって、金持ちの家出したペットの捜索に、ペット捜索に、子守に、チケット購入の代理人に、
夏休みの宿題の手伝いとか親びんは俺に出来ないことをいっぱいやってきたんだ!すごいだろ!
どう?依頼してみる気になった?
博幸 いや、あの、別に…お構いなく。
どうせ、みつけられなかった挙句、捜査料はこれくらいかかりましたって、ぼったくるつもりなんでしょう?
こっちも今までいろんな探偵に依頼してみて分かってるんですよ。
払えないと分かった途端に借金の取り立てみたいに散々追いかけ回すんだって聞いたことありますし
子分 んなわけないだろ!親びんがそんな酷いヤツだと思うなよ!
そこいらのショボい裏稼業の奴らと一緒にすんな!
博幸 どうですかね……信頼できませんね
親分、博幸の背後に立つ。
親分 おい
博幸 (驚き振り向く)はいっ?
親分 さっきから聞いてれば…
子分 お、親びん!ガツンと一言、言ってやってくださいよ!
コイツ、親びんの悪口を言うんすよ!
親分 あることないこと…
子分 そう、コイツ、親びんのこと誤解してるんすよ!
親分 言ってんのはテメェの方だこの野郎!
子分 えぇ〜なんでそうなるんすか?
博幸 あの、もしもし?急いでるんで、そろそろいいですかね?
親分 待て。お客さん、こっちも客商売の信頼業でしてね。信頼で稼いでるんですよ。
そんなに疑うのならお客さんの納得のいく金額を報酬として支払ってくだされば結構です。
それに、私どもの仕事ぶりが心配ならば、支払は依頼が終わってからでも十分です。
キャンセルもアフターケアもお気に召すままに。
子分 おぉぉ、ひっさしぶりに親びんの営業仕様の流暢な敬語を聞きました!オレ、感動しました!
親分 お前は引っこんでろ。(博幸を見て)おや、信じられない、という顔ですね
親分と博幸が交渉している横で、放っておかれる子分。
客席の背後に幸子が立つ。帽子をかぶった幸子をピンスポットが照らす。
子分だけが幸子を見つける。
子分 お、親びん、親びん!親びん!ちょっと見てくださいよ!
親分 取り込み中だ、黙ってろ
子分 だって、親びん!あれ、あれ見てくださいよ!!
親分 あぁ?うるっせぇな
子分 早くしないと逃げられちゃいますよ!
親分 何にだよ…って、おい、ありゃあ
博幸 あ、幸子さん
幸子 親分さーん!
親分 あの女じゃねぇか!おい、何ぼさっとしてんだ!早く追いかけろ!
子分 …うぇっ、あっ、へい、親びん!待てぇぇぇぇ!!
博幸 親分さん、あれが俺が探してる人です!
親分 分かった
子分はける。子分は幸子がいる場所とは別のところに出てしまう。
その様子を見て親分も走ってはける。博幸は親分とは反対側にはける。
舞台に人がいなくなった頃、子分入り。誰もいないのを確かめ、のんきに座り込む。
親分入り。休んでいる子分をしかってから、走ってはける。
子分が親分を追いかけ上手に向かう一方、下手から幸子が入り。
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