エリー     ですが、ご主人様は、只今外出なされているのです。

詐欺師     ならば、3割ほどで良いから、今すぐに返してくれまいか?

エリー     でも…エリーにはお金に触れる権利が与えられてないのです。すみません

詐欺師     仕方がない。ならば、アルフレッド氏が帰ってくるまで待たせていただこう

エリー     (戸惑いの後)ただいま扉をお開けします。少々お待ちください。



 扉を開ける音がする。詐欺師とともにエリーが入る。



エリー     本当は、エリーのデータにないお客様は屋敷の中に入れてはならないという
         原則があるのですがご主人様の命の恩人なら仕方がありません。どうぞお入りください。



 ドアを開けてからしばらく詐欺師をジロジロ観察して、エリーは何かに気づいたように
 詐欺師を下手に追い出す。詐欺師は下手の窓から顔を出す。エリーも舞台に戻る。



詐欺師     な、何をするんだ

エリー     (機械的に)防犯プログラムが反応しました。防犯プログラムが反応しました。
         防犯プログラムが反応しました。故にエリーに扉は開けられません。(元に戻る)
         貴方、さっきのツボ売りじゃないですか。人の目は騙せてもロボットの目は騙せませんよ!
         貴方の目の虹彩の形状パターンは、すでに自動的にインプットされました。諦めてお帰りください。



 詐欺師、舌打ちをして、その場を去る。



エリー     あー、本当にしつこい詐欺師ですねぇ。お涙頂戴の同情のとり方も古臭ければ
         胡散臭いツボを売るのだって古臭くて、誰が引っかかるのか謎ですね。
         私さえ騙せないなんて情けなくって笑っちゃいますねぇ。
         アルフレッド様、エリーはポンコツ、ポンコツって散々言われましたけど、
         今日は見事に犯罪防止プログラムが良い方向に機能してくれていますよ。
         以前犯罪防止プログラムの暴走でアルフレッド様のお母様を一晩中お屋敷の外に締め出してしまいましたけど。
         あの時は、本当にメイドロボット生命が絶たれそうでした。だってお母様、私の体を分解しようとするほど、
         お怒りになられて…今考えてもゾッとします。でも、あの時もアルフレッド様はお優しくご忠告なさるだけで…
         メンテナンスにも行けて、エリーにとっては結果オーライの事件になってよかったです。
         ところで…アルフレッド様は今いったい、どこで何をなさっているのでしょう。
         アルフレッド様がココにいたら、その場で私の成果を褒めてくださるのに。
         まぁ、ご主人様がお屋敷にいないからこそのエリーの留守番のお仕事なんですけど…
         ご主人様がいないと、やはりエリー寂しいです…



 一瞬の間が空いて、どこからかベルの音が鳴り響く。
 エリーはうつむいていた顔を上げて、満面の笑顔になる。



エリー     お食事の時間でぃす!エリー、オイル補給の休憩を取らせていただきまぁす!



 ニヤニヤ笑ってエリーはオイル補給の準備をする。壁につけられていたホースまで
 スキップで移動し、それを背中にさして、その場に正座する。エリーはうれしそうにする。



エリー     やっぱり、お仕事を頑張ってるときのオイルは美味しいですーはふぅ、
         疲れた体も心も癒されるってもんですねぇ〜やっぱりサラダ油より紅花油です〜。美味しくって、しあわしぇ〜♪



 エリーの台詞の途中に、さっきの詐欺師が何か心に決めたように、舞台端に出る。
 そしてインターホンを押す。エリーが落ち着いたと同時にインターホンの音。
 エリーは今までと一変して、不満そうな顔になって舌打ちをする。



エリー     また誰か来た。よりにもよって人のお楽しみの時間に、食事の真っ最中にぃ…



 しぶしぶ立ち上がり、ホースを背中からとる。気を取り直してアイホンを取る。



エリー     はぁい、どちら様ですか?



 画面を見ると、またもや詐欺師。エリーはため息を吐く。



エリー     また貴方ですか。そのしつこさには呆れる反面感心しちゃいますよ。
         しつこい人は、嫌われるって学校で習わなかったんですか?いい加減に帰ってください。
         貴方に騙されるような人なんていませんよ。私ロボットですけど、ロボットさえ
         騙せないんじゃ、詐欺師失格ですって。さっさと諦めて真っ当な人生やり直してみては
         どうですか?こんなことしてる時間がもったいないですよ。ほら、帰ってください

詐欺師     誰が動くか

エリー     動かないですって?一体何がしたいんですか?そんな玄関のドアの外で…

詐欺師     うるさい。とにかく動かないからな

エリー     理解に苦しみます。風邪を引くだけですよ?

詐欺師     そうしたら、この家を訴えてやる

エリー     訴える?何を根拠に?

詐欺師     客人を招待せずに追い出した罪でだ!

エリー     そんな罪ないですよ。でっちあげにも程があります。大体、貴方他人ですよ?
         ドールストマン家のお客様でない以上、お屋敷の中に入れるわけにはいかないのです。
         これは私の義務ですから。エリー初めてのお留守番の義務なのです。

詐欺師     ほぉ、メイドのくせに留守番が初めてなのか。

エリー     留守番の経験がないことを貴方に言われたくないです。関係ないでしょう?

詐欺師     だからか。じゃあ、教えてやるよ。

エリー     何を?

詐欺師     留守番の最中に訪れた客人に、留守番しているヤツは茶を出さなくちゃいけないんだよ。

エリー     へ?お茶?訪れた人全員に出すのですか?そんなのアルフレッド様のメモには…(メモをポケットから出し、確認)

詐欺師     へへ、人間の世界では常識だから、うっかりして誰もそんな当たり前のことを教えてくれなかったんだろ。

エリー     あぁ、アルフレッド様は時々おっちょこちょいですから、私にご指導するのを忘れてしまったというわけですか。
         これは失礼しました。データの書き換えを行います。
         それでは詐欺師さん、少し待っててくださいね。お茶をお持ちいたします。



 エリー、キッチン(上手)へ行き、お盆に載せたお茶を持って玄関に向かう。



エリー     あ、でもどうやって手渡したらいいのでしょうか…仕方ないです、ドアをそっと開けて、そっと手渡しましょう。



下手にはける。隙を狙ったのか、詐欺師が家に入ってくる。下手から出る。



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