エリー     変な詐欺師…(気を取り直して宣言)改めてお掃除から始めまーす!



 上手にはけ、モップを持って入る。掃除を始める。しばらく床を磨いている。鼻歌なんかも歌いながら。
 すると突然ねずみの足音が聞こえ、エリーかたまる。



エリー    こ、この足音は…



 足元をねずみが走り、エリーが悲鳴を上げて飛び跳ねる。テーブルの物陰に隠れて、ふるえる。



エリー     もしかして、もしかして、もしかすると…や、ヤツですか。エリーの天敵で、
         あのネコ型ロボットの大先輩が嫌ったことから、この世界で忌み嫌われてて、
         汚くて屋敷中を駆け回っては悪さをする小動物…



 そろそろとモップを握って、腰が引けた状態でねずみに近づく。
 チュー、と声が聞こえる。エリー、またもや悲鳴を上げて逃げる。



エリー     いやぁぁ、エリー、ねずみ、だいっきらいなんですぅぅぅ!!
         あの声とか足音とか聞くだけで鳥肌立つんです!実際鳥肌なんてたちませんけど、
         嫌なんです!でも…でも…捕まえないと、どんどん増えて悪さをするし…でも…
         近づくの嫌、だけど…アルフレッド様のために捕まえなくちゃいけなくて…うぅ…



 迷った挙句、エリーは再び挑む。



エリー     アルフレッド様のため、ご主人様のため…です!



 逃げるねずみ。モップで抑えて捕まえようとするエリー。逃げるねずみを追うことに
 夢中になって走るが、逃げられる。がっかりして肩を落とすエリー。



エリー     また逃げられた…。エリー、ハンターとしては失格ですね…ヤツの逃げ足はエリーに勝るんですから…はぁ…



 そのとき、家の外に先ほど電話をかけた詐欺師がやってくる。ピンが抜く。
 (さっきと同じ立ち位置で、目の前にある豪邸を見上げる形で)



詐欺師     ここか、アルフレッド・ドールストマンの屋敷ってのは…



 マイムで、インターホンを押す。チャイム音にエリーが反応する。モップを片づけ、カメラ付きアイホンを取る。
 映像で相手を確認する。詐欺師は、そのカメラに向かって話す。



エリー     はーい、どちら様ですかー?お名前をどうぞ

詐欺師     R社の訪問販売部の者ですが

エリー     “R社の訪問販売部の者ですが”さんですね。少々お待ちください。
         (脳内コンピュータから名前を検索中)…そのような方は存じ上げておりませんが。少々ドアにお近づき願いますか?
         (詐欺師はもっと近づく)…貴方様のデータが私のデータベースに登録されておりません。お帰りお願いします。

詐欺師     ちょっ、ちょっと待ってください。私初めてコチラのお宅に販売にやってきたもので…

エリー     初めていらっしゃるお客様なのですか?

詐欺師     はっはい、その通りです。

エリー     それで、どのようなご用件でございましょうか?

詐欺師     本日は、この素晴らしい新商品、一ヶ月で身長が三十センチも伸びる「びっくりノビール」のご紹介に…

エリー      そんなインチキくさい商品、いりません。

詐欺師     では、こちらのツボはどうでしょう?

エリー     いりません。アルフレッド様がツボ売りには注意しろと仰っておりました。

詐欺師     私は怪しいものじゃないんですよ、どうぞご安心なさって…

エリー     怪しいものじゃない?普通の人がそんなことをわざわざ口に出して言うわけないじゃないですか

詐欺師     ですから、このツボですが…

エリー     しつこいですね。帰ってください。

詐欺師     只今。なんと。なんと…なんと!99%オフサービス中なんですよ〜。

エリー     99%オフ?そんなの詐欺の被害談以外で聴いたことないですよ。帰ってください。本当にしつこいなぁ、もう



 エリーは怒って相手にするのをやめ、アイホンの受話器を置いて、仕事に戻る。
 詐欺師はここで、ちっという表情。そして、上着のフードを目深にかぶり、またインターホンを押す。
 エリーは怒ったようにまたアイホンを取る。ドアの前には先ほどの詐欺師が
 フードのついた服を着て顔を隠し、立っている。エリーは同一人物と気づかない。



エリー     どちら様ですか?

詐欺師     十五年ほど前にアルフレッド・ドールストマン氏の命を救った者です。

エリー     貴方が、ご主人様のお命を救ったのですか?十五年前に?
         …十五年前といわれても、エリーは十年前にアルフレッド様のメイドとしてドールストマン家に来たので
         …詳しい話は存じ上げておりません。それで、どのように貴方様はご主人様のお命を救ってくださったのですか?

  詐欺師     当時のアルフレッド氏は荒れていました。自殺しようと東京タワーから
         身を投げる寸前のところで私が止めたのです。

エリー     ご主人様が自殺するところを止めた…ご主人様が十五年前に東京タワーから身を投げようとした…?
         とても信じられないんですが…

詐欺師     そうでしょうとも。アルフレッド氏は、随分変わった。

エリー     当時、ご主人様がそんな状態だっただなんて、知りませんでした。
         それで、ご用件は何でしょう?

詐欺師     アルフレッド氏に、その時貸したお金を返して欲しいと思ってきたんですよ。

エリー     ご主人様が、貴方からお金を借りていたんですか?

詐欺師     えぇ、それはそれは膨大な額でして…

エリー     えっ、そんな大金を!?

詐欺師     ですから、アルフレッド氏に会って返して欲しいと…



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