近頃、主の様子が変だ。
いつもならフラフラと何処かへ出かけてしばらく経ってから連絡が来て、後始末を押しつけられるのが私の日常なのに近頃は怠けたいのか、ずっと部屋から出て行かない。
それどころか私の方をジロジロ見てくる始末で、それならば読書でもと思った私の邪魔をしてくる。
話しかけられるのなら慣れている。
「ねーアイ、何の本読んでんの?」
「ねーそれって面白い?」
「ねーアイってばー」
気が向いたら相槌を。気が向かない時には無反応で答えるのみ。癇癪を起こしても知らぬふりを。
子供なのだから騒ぐのは日常茶飯事だと思うのは至極当然のこと。なのにここ2、3日はじっとこちらばかり見つめては、まじまじと私を観察しつづけている。何がしたいのかなど私に分けるわけもなく。椅子に腰掛けている私の足に頭を乗せたり肘をついたりしては私の顔を見上げている。いい加減、この視線にも少し苛立ちが滲んでくるというものだ。
「どうしたんですか」
パタン、と本を閉じて問うと、主は無邪気に笑って見せた。
「ごめん」
「私は質問したんです」
「別に」
にこにこと笑う主は、いつにも増して機嫌が良いように見える。
「理由もなく私の隣りで3日もそうし続けていたのですか」
小さな溜め息をもらせば主は珍しい表情を見せた。
「本、読んでる時のアイが凄く楽しそうだったからさ。ちょっと見てたかったんだよ」
照れているような強がる表情を見せ、主は顔を上げた。
「アイが楽しそうだと俺も楽しくなるから、もしかして俺はアイみたいに本が好きな人間だったのかなって。こうしてるとさ、なんか時間が止まる気がするし」
見上げる主の顔に説得され、私はこれ以上深く問わないことに決めた。
そっと主の頬に手を差し延べ
「そんなに私は読書の時、幸せそうですか」
と尋ねると「あぁ」と素朴な答えがもたらされた。
こんな日々も、時には必要なのかもしれない。