私の知っている魔人は、謎が大好物な上に謎しか食べられないという、食べることが大好きな私からしたら少し可哀想な生き物。
ちょっとした謎の香りでも嗅ぎつけた途端、涎を拭きながら子供のように大喜びしながらありつこうとするし、それが実際大きな謎だったら、それこそ大はしゃぎして我を忘れて駆けつける。
でも最近は、私の生きているこの地上の謎も魔人のお腹を満たしてはくれないみたい。
それなのにその食事を邪魔する存在が現れてしまうから、お腹を空かせた魔人は自分の身を削ってまで、その謎を食べようと必死になって。
その姿を見るたびに食べることの喜びを知っている私は胸が張り裂けそうになって、言葉が詰まる。
だけどいつも止めることが出来ない。
それはネウロが必死に生きようとしている姿でもあるから。
必至に生きようとするあまりに自分の命を削るネウロを止めることなんて、私には出来ない。
それに、もしネウロが謎を食べられなくなったら、地上の謎も食べつくしてしまったなら、食べるのをやめてしまったら、一体どうなってしまうんだろう。
ネウロは死んでしまうのかもしれない。
それとも魔力が尽きて人間になるのかもしれない。
それともその前に別の世界へ行ってしまうのかもしれない。
どうなったとしても、きっと今のままではいてはくれない。

戦いでボロボロになって事務所に帰って来た魔人を見るたびに、涙が出そうになる。
食べたいのに食べられない。その悲しさを一番よく知っているのは私だ。
そこにあるのに食べられない。夢に描いた御馳走。
そんなのが現れたら、私だって命を張って食べたい。
考えるだけでゾッとする。ゾッとするとともに憧れる。
そんな御馳走、目の前にしたい。
いくらネウロがボロボロになっても、私には止められない。
涙を流しても、胸を痛めても、何も変わらない。魔人は救われない。
その謎を口にしない限り。

ある日、疲れ果ててソファに横になった魔人を前にした私は、ちっぽけな言葉をかけることさえ出来なかった。
その代わりに、そっと伸ばした手で、その弱った体をギュッと抱きしめた。
泣きそうになる目と唇をぐっと引き締めて。
「何だ、我が輩を絞め殺すつもりか」
魔人の笑い声さえ、どことなく寂しく思えて私は精いっぱい明るく言ってみた。
「ちょっとこうしていたいだけ」