「匪口さんってずっと眼鏡外さないね」
桂木は俺を見上げてそう言った。ソファ替わりのベッドに並んで座って映画のDVDを見終わった後だった。
リモコンで停止させる。
「別に夜は外すよ」
「流石に寝る時は外すんだろうと思うよ。お風呂とか。でもそれ以外はずっとつけてるよ」
俺はニヤ、と笑ってみせた。
「いや、もうひとつ外す時はあるんだぜ。桂木、教えてほしい?」
ドキリ、とした様子で桂木が頬を染める。
口に手を当て、目を泳がせ、静かに頷いた。
「知りたい…かも」
真っ赤になった桂木の可愛さに頭の中がぐらりと傾く。
「良いの?」
こくん、ともう一度頷いた。
俺は生唾を飲み込んで、そっと桂木の肩に手を置く。
いつものように優しく唇を重ねて、そっと桂木の体をベッドに押し倒した。
桂木は真っ赤な顔を逸らし、俺の前になまめかしく首をさらす。
その真っ白な耳たぶに歯を立てると、きれいな桃色に染まった。
「…っふ…」
身をよじる素振りを堪えて俺を見上げる。
「もしかして桂木…耳弱いの?」
耳元でささやくと真っ赤になる。可愛い。
ゾクゾクくすぐられる悪戯心が俺をつき動かす。
啄む様に口付けを落とす。舌を突き出して輪郭をなぞる。
そっと咥えてもう一度歯を立てれば熱い吐息を漏らした。
「ひ、ぐちさ…」
自分の発した声の甘さに驚いた桂木は咄嗟に口を塞いだ。
見上げるその視線に目を合わせ、くすっと笑う。
「声、聞かせてよ。別に俺しか聞いてないんだから堪えなくても良いだろ。桂木の声が聞きたいんだ」
そっと、口元を覆う柔らかな手に指をのせる。
細い指に絡ませ、引き寄せ、ゆっくりと唇を近付け舌を這わせる。びくり、と桂木の肩が震える。
手のひらの窪みから、指の付け根、第二関節の溝を経て弾力のある指の腹へ。
爪と肉の間に舌をいれこんだら、桂木の口から堪えきれなくなった熱い息がこぼれた。
音を立てて啄んで桂木を見やれば、すっかりほてった様子で目を潤ませていた。
掴んだ右手を引っ張り、桂木の体を手繰り寄せる。
怯えの消えた瞳をうかがいながら、震える唇にそっと触れる。
唇の縁を微かに覗かせた舌で濡らしながら角度を変えて触れるだけのキスを繰り返す。
桂木の体温が上がるにつれて徐々に長く触れる様にしていく。
息が上がり始めたのを見計らい、一気に舌を押し込んだ。
熱くほてった桂木の舌に絡ませ、慣れないその動きを促していく。
舌と舌が重なって離れれば、唾液の絡む音がした。
離れてから擦り合わせる様に絡ませると、桂木の背中がのけぞって舌の動きが鈍る。
ざらついた表面が背筋を撫で上げるように、欲望が背中を這い上がる。
舌を絡ませたまま離れると、桂木の口元を唾液がこぼれた。
ようやく全て離れ、胸の奥の熱い物を吐き出す。
とろみを帯びる桂木の目が俺を見つめると、頭の奥が煮えたぎる様だった。
桂木の口元の汚れた部分を舌で舐めとり、そっとベッドに横たわらせる。
顎の骨を伝って首元に唇を寄せ、小さな口付けを落としていく。
生唾を飲み込んでワイシャツのボタンへ指をかける。
小さなボタンを外すことにじれったさを覚えながら、三つのボタンを外し終える。
裾をスカートから引きずり出し、するりと手を入れる。そっとシャツの影で触れると桂木は指を噛む。
背中に手を回し、指を鳴らす要領で下着のホックを外した。
するとすかさず、ちょっと待ってと桂木は制止した。
ベッドの上に起き上がって座り直し、リボンを外したかと思えば一気にセーターを脱いだ。
ぱさり、と静かに桂木の手を離れてベッドの上に横たわる。
その様子に待ち切れなくなって背中から手を回し、裾からシャツの中に滑り込ませた。
目の前の真っ白なうなじにキスをして、まるで吸血鬼のようにはだけた肩に歯を立てる。
微かに残した跡に舌を当てれば、桂木は顎を上ずらせた。
左手で腰の辺りを撫で上げながら右手で更にボタンを外していく。
全て外し終えたら、桂木が体を俺に向け俺の名前を呼ぶ。
再び唇を重ねて舌を絡ませ、さりげなく胸元へと手を伸ばす。
包み混む様に触れると桂木の呼吸が微かに乱れた。指先でその小さな先端に触れる。
すると今度はビク、と大きく震えた。
ゾクリ、と俺の脳みその奥を何かが走る。桂木を解放し、ゆっくりとその体を倒す。
桂木の体に力が入らない様にキスをしながらスカートの中へと手を忍ばせ太股を撫ぜる。
喉を鳴らした桂木はぎゅ、と目を閉じる。ためらわずに下着に手を掛け一気に引きずり下ろす。
小さく声を上げたが気にせず指をあてがった。
先端を中へと滑り込ませると、奥から熱いものが滲んできた。
桂木は堅く目を閉じ、左人差し指の第二関節を噛んでいる。
静かに指を動かしていくと、どんどん奥から溢れてくる。
指を曲げたら、小さな嬌声が耳に届いた。
ココか、と思い一瞬離れてからしばらくの間を置いてそこを攻め立てる。
滑りが良くなって指を増やすと、桂木はますます指を噛む力を強めた。
咥えた指の先は白くなりかけている。
ずるり、と濡れた指を引きずり出す。咥えられていた指に赤みが戻る。
汚れた指先を舐め、そのまま桂木の赤みの戻った指を舌でなぞる。桂木の手を取り、背中へと促す。
「痛かったら爪立てても良いから」
優しく告げ、ジーンズの中で窮屈だった自分のソレを解放してゴムを被せ、あてがう。
桂木の足に片手を当てて、ぐっと先端だけをおしこませる。
慣れない痛みに桂木の表情が一瞬曇るが、すぐに緩む。
力抜いて、と囁いて口付けを落とす。
桂木の肩の強張りが緩んだのを見計らって更に奥へと進める。
きゅうきゅうと締め付ける桂木のナカは窮屈の様で心地が良い。どくどくと自らが脈打つのが分かる。
焦るな、と自分を諫めて桂木と目を合わせると、微笑んでから大丈夫、と呟かれた。
息を吐いてゆっくりと一番奥までおし進めた。桂木が熱い吐息を漏らす。
ゆっくり動き始めたら、桂木の口は甘い声で俺の名前を繰り返した。
律動の中から伝わる快楽の波が頭の奥を痺れさせる。
ぐっと桂木の腕に力がこめられて俺を引き寄せる。
じっとりと汗が滲む。でも動きは止められない。桂木のナカは俺をしめつけ擦り上げる。
「…はっ……んんっ…匪口、さん……っ」
桂木のとろけた声が俺の耳を犯す。涙の滲む瞳が俺を捕らえて放さない。
ぐちゅぐちゅと接合部分から音が漏れる。背中にある桂木の指が背に立てられる。
爪が立つ。布越しに引っ掛かれる。痛みなのか快感なのか判別のできない刺激が体中を走り抜ける。
「かつ…らぎ…っ」
無我夢中の意識の中で呼ぶと、桂木が一瞬幸せそうに微笑んだ。
もう一回背を引っ掛かれ、桂木の喜ぶ声が脳内に届いた。
「…っ、弥子…っ」
締め上げられた途端、体中に広がった解放感と共に視界は真っ白になった。
視界に光が戻って来て、俺は桂木の上に乗った。体中の力が抜ける至福の一時。天国にいるようだ。
桂木の胸に顔を埋めると、桂木の手が俺の頭の上に伸びてきて、ゆっくりと撫ぜた。
這うようにして桂木と顔を合わせたら、桂木の方から唇を重ねられた。
そっと離れた桂木の顔は、幸せそうにとろけていた。
「桂木、好きだ」
おもむろに呟いたら、母親の様な顔で「私も」と答えられた。
本当に天国に来てしまったかの様な錯覚が俺を包み混んでいた。