駅の売店にぶら下がってる天使。いつもいつも眺めるだけ。
お土産の一つで、10センチ未満の、可愛いけど、ちょっと金欠の私には断念せざるを得ないお値段の天使たち。
真っ白な羽が背中にあって、皆色とりどりのワンピースを身につけてる。
黄色に赤にピンクに緑にオレンジに白…全部で15色。
仕事の役割が見ただけで分かるように洋服の色を神様が分けたんだ、ってタグには書いてあった。
もちろん恋の天使はピンクのワンピース。ちっちゃな天使はいつも改札の外で、行きかう人々に微笑みかけてる。
その微笑に捕らえられて、来るたびに足を止め、手に取り、そして諦める。
今日もそんな感じ。電車が来るまであと20分。それまでの時間つぶし。タグに書いてある天使の紹介を読むだけでも、結構面白い。売店のレジのお姉さんには、きっと顔を覚えられてる。恥ずかしいけど別にいいや。
天使がいっぱい下げられているコーナーの前に立つ。今日もいっぱい並んでる。
手を上げて、ピンクのワンピースをはいた子を手に取る。つぶらな瞳が、買って!と訴える。
でも無理。でもやっぱ買いたい。けどお金がない。
ぐるぐる考えて、手に取った小さな天使を見つめる。
「どうしよっかなー」
「あれ?桂木、こんなとこで何してんの?」
「え?……っ…匪口さん!!?」
振り向くと、すぐ側に匪口さんが立っていた。
「ひ、匪口さんこそ!」
「俺?俺は別に、ただそこの喫茶店で仕事してて、桂木が目に入ったからさ」
「そうだったんですか」
「ところで、それ何?」
「天使のキーホルダーです。小さくて可愛いなぁって」
「欲しいんだ」
「え?」
すっと匪口さんの手が伸びてきて、私の手から天使を奪い取ってからレジに向かって歩き出した。
「あの…っ!」
「いいって、いいって」
匪口さんの手によって、天使は、あっという間にレジに連れて行かれてしまった。
チーン、とレジに通され、匪口さんが断る隙をくれないまま代金を払ってしまった。気づけば「はい」と手渡された後だった。
そして匪口さんは駅の時計を見て、やべ、とつぶやいた。
「ゴメン桂木、ちょっと大事な用があるから、俺帰るわ」
そしてそのまま声もかけられない速さで去ってしまった。
一人ぽつんと取り残された私は、仕方なく受け取った天使を見つめる。
ピンク色のワンピース、恋の天使。恋のキューピッド。一体私は何てお願いしたらいいんだろう?
ため息混じりに微笑んだ私は、天使の羽に唇を寄せた。
いまだ言えずにいるこの気持ちを、3センチの小さな翼に託して。