『あけましておめでとうございます』
新年早々元旦に俺の家のポストに届いていたのは数枚の年賀状だった。
誰かに住所なんて教えたっけかな、と寝ぼけ頭で首をひねり、薄くて温いインスタントコーヒーを片手にどれどれと眺めた。
大体は仕事仲間からで、パソコンで作成された図柄が印刷されている。
図柄の選び方で差出人の趣味がおおよそ把握できる。
同じ職場のおっさん達からはパソコンを片手にしているネズミばっかりだし、おばさん達からはひょうきんな顔のネズミばっかりだ。
でも干支の姿すらない葉書もちらほらあった。
石垣の野郎はメールみたいに絵文字だらけの文面がビッシリと(しかもウザいことばっかり)書いてあったし、笹塚さんは見たこともないくらい薄い墨で「謹賀新年」のみ。
あぁ、笛吹さんと筑紫さんのにはちゃんと動物がいる。
筑紫さんのは渋いリアルな水彩調のイラストで、笛吹さんのはメルヘンって感じでパステルカラーのネズミが笑っていた。
そしてそれぞれの葉書に一言ずつ書いてある言葉に目をやったら、苦笑ばかり零れた。
年賀状をもらったのなんて何年ぶりだろうな、としみじみと浸っていたら最後の一枚に女の文字が現れた。
手書きの、若い女が書きそうな文字だった。
ひっくり返すと、小学生の落書きみたいな下手くそなネズミが笑っている絵と、一行言葉が添えられていた。
「今年も一緒にいられますように」
その下には、よく知る女子高生探偵の名前。
「あれ、俺…いつ桂木に住所教えたんだ?」
疑問に思いつつも下手くそなネズミの絵と、そのたった一行の言葉に口元が緩んだ。
それはまるでそのネズミのような笑い方だった。





written in 2008 Jan.