「桂木、俺桂木のこと好きだから」
真面目な顔して匪口さんは告げた。
この言葉を耳にするのも何度目だろうか。そして私が赤面するのも何度目になるんだろう。
DVDを見終えて、そろそろ帰ろうかなと立ち上がった私のスカートの裾を掴んだ匪口さんの手が私の手へ伸びてくる。
ぐいっと引っ張られて、ストンとソファに再び座らされる。
「あの、匪口さん?私、そろそろ…」
「今まで俺、桂木から好きだってハッキリ言ってもらったことないんだけど」
どきり、とする。
「桂木はさ、俺のことどう思ってんの?」
どうしてこの人はそう言うことをさも何でもないことのように、口にできるんだろう。
私は匪口さんみたいにポンとその気持ちを言葉で表せない。
いや、表そうとすると顔が熱くなって脳みそが沸騰してしまって言葉にならない。
「私だって、匪口さんと、一緒だよ?」
なんとかやり過ごそうと笑って誤魔化すけど、匪口さんは不満そうな顔を私に示す。
匪口さんは私を困らせたいんだろうか。そんな目で見られても、そう簡単に口に出来るならとっくに発してる。
それに、そういうのって簡単に口に出しちゃうともったいような、いや何か間違ってるような気がするのに。
「言ってくれるまで帰さないから。今日こそは桂木から直接聞く」
黙り込んだ私を見つめた匪口さんの目は許してくれなさそうで、私はぐるぐる悩んで沸騰しそうな頭をなだめながら口をパクパクさせる。でも声にはならない。
「…ひ、匪口さんの、意地悪」
「俺が聞きたいのはそんなんじゃない」
ぐっと言葉を詰まらせ、ぎゅっと目をつぶる。どうしよう。言わなきゃ。言わなくちゃ。
「私は…匪口さんのこと…」
体温が上がる。舌がもつれる。
「…す…きです」
とうとう言ってしまった。はるかに短くも長い一瞬。
恐る恐る目を開けたら、匪口さんは真っ赤な顔で笑っていた。そして私に覆いかぶさるようにして、そっと私を抱きしめた。
「ありがと、桂木。すげぇ嬉しい」
無邪気に笑う匪口さんに、私もなんだかつられて真っ赤な顔で笑ってしまった。