10年後。

それは漠然としている様で世界的な変化なんて望めない、遠いようで近い未来。
でも、俺からしてみれば見当もつかない大未来の様だ。
極論、人間なんて明日死ぬかもしれないし、下手したら眠ろうと布団の中で目を閉じたら最後、大地震が来てアッサリ人類が滅んじまってもおかしくない。
なのに、どいつもこいつも簡単に10年後の自分がどうとか、夢がどうとか言ってのける。
そんな不確かで危うい未来なんて、俺にとっちゃくだらないってだけで、何も面白くない。
しかも人間は、未来を口にするとき、すげぇ嬉しそうな楽しそうな顔を見せる。
でもどうしてか、その顔を見るのは、まんざらでもない気がするから不思議だ。

「匪口さん、匪口さんは、何歳で結婚したいですか?」

一瞬脳内がフリーズする。ニコニコ微笑む桂木の顔。
「何?突然…?」
するとずいっと目の前にケータイを突き出された。
桂木のケータイの画面には赤い文字が点滅している。
目がチカチカしそうなその画面を見ると「あなたは28歳で結婚します!!」と書かれていた。
「…何コレ」
「占いですよ占い!今流行ってるんです、ネット占い。イロイロあるんですよー前世占いとか浮気度占いとかストレス診断とか!匪口さんもやってみます?生年月日と名前と血液型だけでできるんですよ♪」
「あーカンベンしとくわ」
仕事上、そういうのがランダムで結果を表示する素人のプログラムだって知ってる俺は、さらりと断る。
えーとほほをふくらませる桂木が、やたら幼く見えた。
「でもこの結果、ちょっと嫌なんです…
私25歳までに結婚したいなーって小さい頃から思ってるから…」
「ふぅん桂木って、そういう人生設計考えてたんだ」
「えぇ、もちろん!結婚したら二人で部屋を借りてー、家事とかは順番決めて平等にやって、月に一度外食で―――…」
指を折って目をキラキラ輝かせながら、つらつら口に出している。

あぁ、やっぱり桂木も他のヤツらと同じなんだなぁ…

「子どもができても仲良く一緒に出かけたりしたいんです♪…あ、もしかして匪口さん今私のこと、子どもっぽいって思ってません?」
「え?あぁ、いや別にいーんじゃない?」
「ですよね!別に大人になっても手を繋げる関係でいたいんです!」

楽しそうな桂木の話に耳を傾けると、自然と楽しそうに過ごす未来の桂木が、ふっと頭をよぎった。

「それで子ども以上にはしゃぐんだろ、桂木のことだから」
くすくすっと笑ってやったら、桂木は目を丸くして否定した。
「いいじゃないですかー!!仲の良い4人家族!!!」
「あ、2人も子ども産むつもりなんだ」
「だって一人っ子じゃかわいそうじゃないですか。私一人っ子で嫌だったんです」
「ふぅん、男とか女とかには、こだわらないんだ」
「できれば男の子1人と女の子1人がバランス良くって良いですね!」
「あぁそう」

頭の仲の桂木が、微笑んで二人の子どもと手を繋ぐ。
そして、誰かと肩を並べて遠ざかっていく。

「くだらないなぁ」
ぼそりと吐き出す、自己満足の囁き。


きっと、未来の桂木の横にいるのは、俺以外の誰かだろうな。
くだらなくも、美しい未来。
そして、俺から見れば羨ましい未来だな。