目が覚めて、軽く伸びをした瞬間に布団からはみ出した右手に、ひやりと冬の空気を感じて急いで元通りにひっこめた。縮こまっていた手足に血が巡る感覚がして、もぞもぞと身体を震わせる。枕もとのスマホで時間だけを確認すると、八時をすこし過ぎたところだった。
やっぱり冬の朝はどうしたって寒いなぁ、なんて当たり前のことを寝ぼけた頭で考えながら、スマホの代わりに、今度はエアコンのリモコンを手探りでつかみ取った。暖房のスイッチを押して手放すと、隣で眠っていたツッキーが、もぞもぞと寝返りを打って、さっきまで壁に向けていた顔の向きをこちらへと変えるところだった。
まだ起きる様子のない寝顔に、俺はうとうとしながら、昨日の夜のことを思い出していた。今日が久しぶりのお互いの休日とあって、ぴったりくっつくようにしながら、昨日はたっぷりの時間をかけてお互いに温度を分け合うみたいに触れ合った。その合間合間に見せたツッキーの表情や漏れ出た声の響きを、俺は頭の中で再生しては噛みしめていく。ツッキーすごく可愛かったなぁ、なんて思いながら目を閉じれば、布団の中の居心地の良さが俺の意識を二度寝の気持ちよさへと少しずつ導いていった。
あくびをひとつしたところで、もぞりと布団の中でツッキーが身じろぎしたようだった。ツッキーの身体が一層布団の中へと沈み込んで、そして寒さから逃げるように俺の肩へと頭を寄せた。足元にツッキーの足が絡まって、そしてようやく落ち着いたのか、静かな寝息が繰り返されていく。
数年前までは、いろんな口実を見つけてくっつこうとしていたのは俺の方だった。それこそ、ツッキーは俺のことを邪魔だとか暑苦しいとか言って引きはがしていたくらいなのに、いつからか、こうやってツッキーからも距離を縮められるのも当たり前のことになっていった。その事実に笑みを漏らしながら、俺はツッキーの髪に鼻先をうずめていた。深呼吸のように、空気が胸の奥まで浸るよう、ゆっくりと息を吸いこむ。一緒に暮らすようになって同じものを使うようになったシャンプーの香りが、かすかに伝わってくる。普段のやりとりでは感じられないその匂いを新鮮に感じながら、それとは別に、何に喩えることも不可能な、ツッキー自身の匂いがそこにあることに俺は満足感を抱いていた。ツッキーの匂いは空気に乗って、俺の胸の底の方から静かに全身を満たしていった。胸の奥から染み出してくる安堵の感覚に、俺は息をつき、ゆっくりと目を細めていた。
こんな時間がいつまでも続けばいいのに。そう願う俺の意識は、また再び夢の世界へと吸い込まれていった。ツッキーが目覚めるまで、今日はこのまま布団からは出ないことにしよう、と夢の中でさえ、考えていたくらいだった。