浮世は心次第〜子づくりしましょ編〜
ツッキーが浴びているシャワーの音に耳をそばだてながら、俺はベッドの上に一人、正座をしていた。眼下に並べた二つの膝の上には緊張で強張る二つの手をのせていて、手汗で湿るその手のひらを俺は、自分が履いている部屋着のスウェット地のズボンの表面へと、何度も擦りつけては汗を拭っていった。
今夜これから、俺とツッキーは、セックスをする。これまでのような、ただお互いの快楽とコミュニケーションを深めるためだけの行為ではなく、その先の、本来のセックスの目的のために、俺とツッキーはセックスをする。そう考える度、緊張で心臓が爆発しそうに鳴り響いてくるけれど、そう決めたのは、ひと月も前のことだった。聞けば男の身体にも女性と同じく生理周期に似たバイオリズムがあるらしく、妊娠のタイミングも、そのためのセックスの日も、それに基づいて決めるのが成功の秘訣だと、専門医から直接教わっていた。数か月前からクリニックに通っていたツッキーは、その間、クリニックからのすすめで、きちんと毎日、基礎体温というものを記録し続けていた。その記録を参考に、俺とツッキーはその周期をしっかり把握し、お互いの仕事の都合なんかをふまえた上で、今日という日をXデーに定めたのだった。
今日がその日だと決まった途端、すぐにツッキーはリビングの壁にかけてある共用のカレンダーに向かい、今日の日付を示す数字の上に、何か大きな印を書き入れた。それは真っ赤な油性ペンによる大きなハートマークで、今日の日付を示す数字を囲んだ大きなそのハートは、遠くからでも嫌というほど目に入るくらいの存在感を、しっかり示していたのだった。
「これで、忘れはしないでしょ」
油性マジックのふたをしっかりと閉めながら、ツッキーがそっけない様子で口にした。そんなツッキーの横顔は明らかに赤く染まっていて、自分や俺の覚悟が、一か月後のその日までに揺らいだり心変わりしたりしないよう、充分に深く、釘を刺しているみたいだった。それもそのはずで、今日という日にむけて、専門のクリニックに通い続けて準備をしてきたツッキーは、その身体の内に子宮の代わりとなる場所を用意するために何種類もの薬を、何日もかけて飲み続けていた。その努力が水と泡とならないよう、ツッキーが念を押すのは、ある意味、当然の話だった。
それに加えて今日の昼のうちに、ツッキーはクリニックで、先日出来上がったというツッキーの遺伝子の入った人工の卵子とともに、胎盤の元になるものを身体の中の、その内側へと入れてきていた。ツッキーがカレンダーに念押しの印を書き入れた瞬間の俺は、ツッキーの思うような不安や心配なんて全く必要ないと思い込んで気にもしなかったけれど、いざその日になってみると、緊張で手に汗をびっしょりかいてしまっているのだから、ツッキーの考えの方がより現実的だったと言えるのだろう。
ツッキーとセックスをするにあたって、ツッキーを待つこのひと時に緊張することは、もうすっかり何年も前に自分の中から無くなっていた。それほど俺とツッキーは肌を重ねあってきたという証拠でもあり、お互いにとってこの行為が特別なものではなく当たり前のものと、すっかり馴染んでいる証拠だとも思えた。それなのに、やっぱり、そのツッキーの卵子に向けて自分の精子を出会わせるためにセックスをするのだと思うと、変な使命感と緊張で、俺の心臓は騒がしく打ち鳴らされ続けていた。自分の精子はちゃんとツッキーのその場所までたどり着くことが出来るんだろうか。もし今夜ツッキーと自分がいつもと同じようにアナルセックスをして、上手く受精できなかったとしたら。そんな時、俺は一体、どんな風にツッキーを慰めてあげればいいんだろうか。そもそも、俺と違ってツッキーは、子どもを持つことに全くといっていいほど、肯定的ではなかった。それなのに、俺のワガママに近い意思を汲み取ってくれる形で、ツッキーの方からそれを了承してくれたに過ぎなかった。だからこそ、俺は、上手く、ちゃんとセックスしなくちゃいけない。俺に向けられたツッキーの思いも優しさも、
今日という日までにかかった時間も努力も、全部水の泡になってしまわないように、きっちりと応えていかなくちゃいけない。そう思うからこそ、俺の心と身体は緊張で、今にもバラバラにちぎれてしまいそうだった。
俺の心配など知るわけもなく、遠くの方で、シャワーの元栓を閉める、キュッという音が鳴ったような気がした。ああ、きっともうすぐツッキーがやってくる。そう思った瞬間、俺は、ベッドの上を離れ、寝室のドアの内側で、その扉に向かい、改めて床の上で正座をして座り込んでいた。
静かに近づいてくるツッキーの足音をたしかに聞きつけ、俺はドアが開く瞬間に合わせて、頭を下げた。
「ツッキー、俺と、子づくりのためのセックスを、して、ください!」
ぎょっ、と目を合わせたツッキーがはっきりと息を飲む音が、俺の耳にまで聞こえてきた。ツッキーはまさか俺がツッキーのことを待ち構えて床の上で正座をしているとは思ってもいなかったらしく、自分の予想よりはるか低い位置から見上げてくる俺の顔を、信じられないものを見つけたような表情で見つめ返していた。
「ちょっと、何……? ……止めてよ、そういうの」
胸のあたりを抑えながら俺の脇をすり抜けたツッキーは、近づいたベッドの上へと、すとん、と腰を下ろして座った。見ればその髪はまだ少し湿り気を残しているみたいで、いつもなら完全に乾かしきってからくるはずのツッキーにしては珍しいな、なんて感想を、俺はふと、胸に抱いていた。これはもしや、俺が待っていると分かりきっていたからこそ、少しでも早く俺のところに戻ってくるために、ちょっとでもツッキーが急いでいた証拠になるんじゃないのか。湯上りの体温も冷めきっていないツッキーからは、ほんのり湯気とともにボディソープとシャンプーのいい匂いが漂ってきていた。その匂いに鼻を広げた俺に、ツッキーは呆れたような表情で、あからさまに息を吐き出した。
「そんなところにいたら、出来ないでしょ。今日、これから……しない、なんて選択肢がないの、お前も充分、分かってるくせに」
風呂上がりの火照りからか、この先の行為を予感しての恥ずかしさなのか、ツッキーの頬はどこかピンク色に染まっているように見えて仕方なかった。その色に、ドキリ、としながら俺は、うん、とうなづいて立ち上がり、急いでツッキーの隣へと近づいて肩を並べて、ベッドの端に腰を下ろしていた。隣に座るツッキーの膝の上で、ツッキーの二つの手が強く拳を握っているのが見える。その仕草を目にして、ツッキーも自分と同じく、いざこうして改まってセックスするとなったら緊張するんだと思ったら、俺は途端に顔がにやけてしまっていた。そんな俺を横目にしたツッキーが鋭く睨んでくるものだから、俺はとっさに、言い訳みたいな言葉を口に出していた。
「ごめん、いざ、こうして、これからツッキーとするんだな、って思ったら、緊張しちゃって……」
「だからって、土下座はないでしょ」
苦いものを噛んだようなツッキーの口ぶりに、俺は耐え切れずに苦笑を浮かべていた。いつもならどちらかが誘うでもなく身体に触れて、流れのままにそれは始められるというのに、いざこうして改まってやるとなったら、途端にどうしていいのか分からなくて、俺は身動きがとれずにいた。ツッキーもそれは同じようで、俺の動きをじっと待っているのか、もじもじと指先を擦り合わせるだけで何もきっかけを与えてはくれなかった。俺はドキドキする心臓を抑えながら、いさ、覚悟を決めて、声を発していた。
「あのさ、ツッキー……、俺と、……セックス、してくれる?」
ほんの少し、こっちに顔を向けてくれたツッキーが、困ったような目で俺を見る。なにそれ、とつぶやく声は怒っているというよりも、やっぱりどこか呆れているときの調子で、痺れをきらした様子で仕方ないと言いたげに、こう囁いた。
「こういう時は、ムードが大事なんじゃないの?」
ほら、と手を伸ばしたツッキーが俺の肩に触れる。そして近づいてきた唇が、そっと、俺の唇の上に重ねられて、ちゅ、と短く音を立てていった。静かに離れていったツッキーと、目と目が、合う。その目に恥ずかしさと、導くような気配を感じ取って俺は、誘われるように、その唇の上へとキスを返していた。
触れては離れるだけのキスは、三度目には深く唇が合わさるキスへと続いていた。ベッドに腰かけたツッキーの肩に手を回し、俺はその背をベッドの上へと押し当てていた。深く探るようにツッキーの口の中へと差し込んだ舌先で、その上顎の真ん中をなぞってあげると、ツッキーの肩がビクリ、と大きく震えるのがわかった。絡めとるようにツッキーの舌をすくい、その裏側を撫でていく。舌と舌の表面を合わせ擦りつけると、ツッキーが湿った息を漏らし始めていた。見下ろしたツッキーの目元は気持ちよさからか早くも緩み始めていて、細められたその目は、ほんのり、笑っているようにも見えていた。
良かった、いつもと変わらない調子で始められた。そう安堵する気持ちを抱くと同時に俺の肩から力が抜け、俺は空いた手のひらでツッキーの頭を、くしゃりと撫でていた。ツッキーの唇から離した唇で、その首筋にキスをする。ふわりと広がったのはシャンプーとボディソープの甘い匂いで、ツッキー自身の肌の匂いと混ざって俺の鼻先をくすぐっていった。その甘さを俺はもっと味わいたくなって、ツッキーの耳の付け根辺りから、鎖骨に向かって、すぅっと一筋線を引くように、白い肌の上を舌先でなぞっていた。
「……ん、……っ、」
びく、と自分の身体の下にあるツッキーの身体が、大きく震えていく。その反応が可愛くて、俺はもう一度、今度は唇で包むように吸い付きながらキスをしていった。ふるふるっとツッキーの顎先が震え、潤んだ視線が俺の方を見る気配がする。パジャマの襟元のボタンをひとつ、ふたつ、外した空間に鼻先を入れて、そのやわらかい部分の肌に唇を当てていく。風呂から上がったばかりのツッキーの肌はしっとりして、いつもより高いその体温が、唇の表面から確かに感覚として直接、伝わってきていた。
「あ、……っ、……ぅ、」
俺が唇で触れる度、口元から漏れてくるツッキーの息の量が増えていく。いくらいつもよりドキドキして興奮しているからだとしても、今日のツッキーの反応はいつものそれより、明らかに分かりやすくなっている。それがなんだか嬉しくて、俺もつい、大胆に先へ、先へと進めたくなってしまう。三つ目のボタンを緩めた先にあるツッキーの乳首はハッキリ膨らんで、その胸の上に確かに張り上がっていた。その先端に唇で触れ、粒を転がすように口に含んでみる。
「ん、ん……っ、ん、」
舌先でつついて、舌の真ん中で舐め上げて、飴のように転がしていけば、手をのせていたツッキーの下腹の皮膚が、大きく波打つ。そろそろツッキーも硬くなりはじめているかな、と手を伸ばせば、パジャマのズボンの上からでも形がわかるくらい、ツッキーは既に硬く、勃ち上がっていた。その感触に驚いて目を上げれば、ツッキーとすぐに目が合った。ツッキーは俺を薄目で見上げながらびくびくと身体を震わせ、息苦しそうに呼吸を続けていく。その顔は熱っぽく上気して、その目はもう、気持ちよさでとろりと視線をとろけさせていた。
「ツッキー何だか今日は、いつもより、感じやすい……?」
もしかして、の疑問を問いかけると、恥ずかしさに顔をしかめた様子のツッキーが、俺を睨みながら視線を逸らして言った。
「これは……、別に、……薬の、せい、だから……っ、」
「薬……?」
「……ぃ、しやすくするための、薬……」
ごにょごにょと曖昧に口にしたツッキーの言葉を上手く聞き取れず、俺は首を大きく傾げていた。それが気に食わなかったのか、イライラした様子のツッキーが、俺の顔の前に手を広げ、俺の顔を遠ざけながら、こう言った。
「受精しやすくするための、補助薬が……、その薬が、作用してるだけ、だから、」
ああ、そういうことなんだ。納得した俺は顔の前にあるツッキーの手に手を添えて、その指先を見つめて、そっと舌を添わせた。愛おしむようにその指の輪郭を、舌で覆ってなぞっていく。
「……あ、」
たったそれだけのことで、さっきまで俺の顔を抑えて突っ張っていたツッキーの手から、すぐに力が抜けていく。ふわり、と柔らかくなった指の腹の皮膚を吸うように唇を当てていくと、恥ずかしそうなツッキーと目が合った。こんな些細な刺激でも、今日のツッキーはすごく気持ちよく感じてしまうみたいで、振り払う気配なんて、どこにも見当たりはしなかった。唇を噛むように閉じて細かく震えを起こしているツッキーの表情を見つめたまま、俺は何度も、その指と手のひらの表面に唇を押し当て、味わうように、その肌を吸っていった。ツッキーは本当にいつもの何倍も敏感になっているみたいで、もうその目は滲んだ涙で潤むようになっていた。そんなツッキーの顔を見つめながら俺は、ああ、可愛いなぁ、なんて気持ちを噛みしめては、もっとツッキーの気持ちよさそうな顔を見たい、と思うようになっていた。改めて伸ばした手をツッキーの腰元に滑り込ませる。下着の張りのある布を潜り抜けて指先を、その内側に進めると、指先にぬるりと濡れた感触が伝わってきていた。
「え、」
思わず顔を上げて視線を向けた俺から隠すように、ツッキーが身体をよじる。抜け出た俺の手には半透明の粘っこい液体がまとわりついていて、まさか、と思ったところで、ツッキーが俺を睨んでいた。
「ツッキー、今日……なんか、すごいことになってる、よ……?」
濡れた指を擦り合わせた俺を睨み、ツッキーは、
「そういうこと、言わなくて、いいから……、早く、」
もぞもぞと自ら下着を脱ごうと腰を折り曲げた。俺の手を汚すものがツッキーの先走りのものだとしたら、ツッキーはかなり我慢していたことになる。これも薬のせいだとしたら、なるべく早く先に進めた方がいいんじゃないか。そう思い、俺は慌てて口を開いていた。
「え、じゃあ、ツッキー、つらいなら、早く挿れるために、すぐに解して、」
「いいから、その必要ないから」
え、と目を見開いた俺に、ツッキーは真っ赤な顔でひねっていた身体を元に戻した。す、っとその足を持ち上げて広げると、露わになった孔の入り口に指を添えて、こう告げた。
「もう、挿れても、大丈夫だから……っ、」
縁に添えられたツッキーの指先が、入り口の皮膚を引っ張って中が見えるように広げていく。くぱぁ、と開いたその中は、これまで見たことがないくらい柔らかく、とろとろになっていて、中から滲んだ体液が入り口をぬるぬると湿らせて覆っていた。その光景を前にして、俺は思わず、ゴクリ、と生唾を飲み込んでいた。たしかに、今すぐそこに俺のちんこを押し込んでも問題なさそうに見える。
「これも、全部、薬のせい……?」
そっと声を潜めて尋ねた俺に、ツッキーは恥ずかしさで泣きそうな表情で首を細かく、縦に振った。とろりとぬめって、ひくついているその入り口に俺の視線は釘付けになっていた。そんな俺を見上げ、ツッキーが強がりの調子で、こう言い放った。
「いいから、早く、ここに……、僕のナカに、山口の精子、たっぷり注いでくれない……?」
俺は考えるよりも早く、自分のスウェットのズボンと下着を一気に脱ぎ捨てていた。ツッキーの足に手を添え、その入り口に先端を押し当てる。押し込む動作なんて必要なく、亀頭が飲み込まれたと思った途端に、奥へ、奥へと吸い込まれていった。少しずつ締め付けながら、絡みつくように俺のちんこの表面をツッキーの内側が覆っていく。
「ん……、ぁ……、」
ツッキーの中はローションを注いだ時みたいに、どこもかしこもぬるついて滑らかになっていた。やわらかいツッキーの中は心地の良い温かさで、俺は根元まで包まれる感触に、思わず息を吐いていた。きゅうきゅうとツッキーが息をするほどに中はうねって、俺のちんこの表面は自然と少しずつ擦れていく。吸われるようにまとわりつくツッキーの動きは口で舐められている時のような感覚もして、でもそれが無意識によるものだってことは、必死そうに切羽詰まっているツッキーの、俺を見上げる表情を見るだけで、明らかだった。
「は、ゃく……、」
浅く息をしながらツッキーが囁く。ツッキーが息を吸って吐くのと合わせて、きゅう、と中が狭くなる。その感覚に急かされるように、俺は腰を少しずつ、揺らしていく。くち、くち、と細かい音がして、恥ずかしさに手の甲で顔を隠しているツッキーの口から、熱い息が吐き出されていく。
「……ん、……ん、……ぁ、……あ、」
まだ大きく動き出しているわけでもないのに、ツッキーの身体が波打っているのがわかる。反らされ始めた胸元で、さっき俺が舐めていた乳首の先が赤く膨れて立ち上がっているのが見え、俺はその先に指を伸ばしていた。潰すように指を押し当て、軽くつまんでみる。
「んん、んっ……、ぁ……、」
びくびくとツッキーの中が大きくうねって俺のを深く、飲み込もうとする。その反応が可愛くて、俺は少し腰の動きを大きくしながら、もう片方の乳首にも指で触れていた。両手でいじくりながら腰を動かせば、びく、とツッキーが大きく背中を反らして身体を震わせた。
「……ぅ、……ん、んん……」
外されたツッキーの手の下からのぞき見えたツッキーの目が、俺を見つめてくる。その目はこぼれそうなくらいの涙を滲ませていて、潤んだその瞳が俺に、もっと動けと意思を示していた。その表情に俺は、ああなんて美味しそうなんだろう、と舌なめずりをしていた。
「ツッキー、可愛い……」
ぐ、っと奥を広げるように腰を押し当てる。
「あっ、……ん、んん……っ、」
びくびくと震えながら腹の上に向けてそそり立ったツッキーのちんこの先から、じわりと先走りがこぼれだす。それを拭うように指を絡めれば、期待に満ちたツッキーの目が俺を見つめ、その唇の端を緩めていく。ツッキーのちんこを手で扱きながら、俺は奥へ、奥へと腰を押し当てていく。
「あ、……あ、……あっ、……あ、ん……、ん、」
ツッキーの口から零れ落ちる声の響きに、脳みそから痺れて体温が上がっていくような気がしてならなかった。ぞくぞくと腰から広がる気持ちよさの波が、背中を伝って脳みそにまで駆け上がってくる。ぐちゃぐちゃとツッキーの中を掻き混ぜる音と感触に俺は熱い呼吸を繰り返していく。ああ、気持ちいい。
「……っ、も、っと……、やまぐ、ち……、もっと、ぁ、あ……、あっ、」
背中を反らせて気持ちよさに目を細めるツッキーと目が合う。ああ、こんなツッキーが見られるなんて、本当に自分は欲張ってきてよかったな、と心から思っていた。ツッキーとの結婚も、ツッキーとずっと一緒にいるための約束以上の何かが欲しかったからだし、子どもも、これまで見られなかったツッキーのいろんな顔が見られたら、と思ってのことだったんだけど、まさか、こんなにぐちゃぐちゃにとろけながら俺のを欲しがるツッキーの表情を見られる日が来るとは、想像さえもしていなかった。
「つっきぃ……、足、持って、」
足を持ち上げた俺の手を追って、ツッキーの手が自らの足を抱きかかえるように持ち上げる。その孔を俺に差し出すような姿勢となったツッキーを見下ろして、俺はぞくぞくと興奮を募らせていた。ああ、いつものツッキーだったら、こんなにすんなりとはしてくれないのに。腰を大きく打ち付けながら、俺は目を細めて嬉しさから笑みを浮かべていた。卵子の元になる精子を採集するときも思ったけれど、こんなツッキーの姿、他の誰にも想像できないだろう。あの時だって、本当はツッキー本人が腰を振る必要なんて一ミリもなかった。ただ、俺が腰を振って一生懸命射精しようと頑張るツッキーの姿を見たいなぁ、と思ってしまったから、つい、小さな嘘をついてしまっただけのことだった。ツッキーはいつでも気持ちよくなると一生懸命に、もっと気持ちよくなろうとする。そんなところが、俺には可愛くて仕方がない。
「ぁ、おっき……、ん……、ぁ、あ、あ、」
気持ちよさで痺れて手から力が抜けたツッキーの腕が足から離れていく。下がってきそうになる足を抑えるために前かがみになって体重をツッキーの身体の方へかけていくと、もがいたツッキーの手が俺の背中に回されてきた。ぎゅう、と抱きしめられると同時に、ツッキーの中の締め付けが一層強くなっていった。ぐちゃぐちゃと絡まる音が、耳に響いてうるさいくらいだった。ぼうっとする頭の中で、耳元で喘ぐツッキーの声が聞こえていた。
「あ、ん、んっ、きもちぃ、……ん、んぁ、……あ、あ、」
ツッキーの声に神経を擦られるような感覚がして、俺はさらに気持ちよくなるためにツッキーの一番奥を突いていった。ぎゅう、と絡まる粘膜の熱が直接伝わって、俺のちんこを熱く攻め立ててくる。ぶるぶると首筋の皮膚が震える気配がして、ああ、もう限界がくる、と思いながら、意識しないままに声に出していた。
「ツッキー、俺、このまま、出していい? ツッキーのナカ、出して、いい?」
ツッキーは俺の首元で、必死に首を縦に振るだけだった。
「ぁ、あ、んっ、んっ、……あ、あっ、あ、あ、」
「出したい、から、出すね……、出すよ、」
ぐちゃぐちゃと押し当てていた動きから、全体を擦るように腰を引いて押し込んだ。ツッキーの中が応えるように、きゅうぅっっと狭くなって、その締め付けられる気持ちよさに、俺は一瞬で膨れていたものが弾けるように、吐き出していた。
「……ぁ、……っ、」
首のあたりで血管の中をポンプのように押し出された血液が一気に逆流するように波打って流れていく。腰から広がって解放されていく熱の塊がツッキーの中へと逃げていく。見えないところでどうなっているのか、頭の中でイメージしながら俺は、波打つ自分のちんこの動きと、ツッキーの中の動きに意識を集中させていた。心臓は全速力をした直後のように、バクバクと騒ぎ立てていた。何度も大きく息を吸って吐いていると、自分の身体の下にいるツッキーの身体も、大きく息を吸って吐いているのが、身体の動きから皮膚感覚として伝わってきていた。
脱力した俺は身体をツッキーに預けるみたいに、ツッキーの胸の上に力なく倒れ込んでいった。火照る顔と同じくらい、頬の下にあるツッキーの身体も高い体温で熱っぽくなっていた。俺の背を抱きしめていたツッキーの手が、俺の頭の方へと移動してくる。くしゃり、と髪の間に指を差し込まれ、頭ごと、胸の上で抱きかかえられていた。どっ、どっ、どっ、とツッキーの心音が伝わってくる。その速さに顔を緩めながら、俺は大きく息を吐いた。
「生まれてくる子は、ツッキーに似てると、良いな……」
ぽつり、呟いた俺の声を聞いて、ツッキーが胸を大きく上下させて笑った。なぜ笑うのかと疑問に思いながら顔を見るために頭を持ち上げた俺に、ツッキーが視線を合わせて呟き返す。
「お前は絶対、そう言うんだろうな、って、ずっと前から思ってた」
おかしそうに顔をくしゃりとさせたツッキーに、俺は唇を尖らせていた。
「ええ、だって、絶対、俺よりツッキーに似た方が、絶対、良いに決まってるよ」
俺のそばかすが遺伝するより、よっぽどツッキーの綺麗な肌と髪が遺伝する方が良いに決まっている。本気で俺は何年もそう考えていたというのに、ツッキーは不思議そうな表情で、じっと俺を見ていた。それがあまりにも、俺の言い分は変だとツッキーが思っているのがあからさまに見えて、少し俺はムッとしていた。ツッキーと、ツッキーに似ている子どもを、まるごと家族として愛せたら、それ以上の幸せなんてありえないと思うのに。
俺の顔を見てニヤッと笑ったツッキーが、俺の頬に、ちゅ、っと音を立てて唇を押し当てた。
「お前にそっくりな子どもなら、手放しで可愛がれるって、自信、あるのに」
ふふ、と含むように笑ったツッキーの手が、ツッキー自身の下腹へと伸びていく。その上を撫ぜながら、俺の目を見たツッキーが、そっとふざけた調子で囁いた。
「お前と僕の遺伝子を半分ずつ受けた元気な子、産んでみせるから、楽しみにしててよ」
その自信満々な表情に、俺は思わず破顔して、お返しのキスをツッキーの頬の上にしていた。
「ツッキーのそういうところ、俺、嫌いじゃないよ」
そう囁いた俺に、ツッキーは心から可笑しそうに、ふふ、と笑みをこぼしてみせた。