【全体経緯】
 2022年2月のRTS!!でイベント参加を最後にする予定だったのですが、まさかの「月受けオンリー」が開催決定の一報を受け、「これを逃したら二度と『月受け』には参加出来ないかもしれない……!」と思い、急遽7月の月受けに参加しようと決めました。
 そもそも、山月で本にしたいと思っていたネタは『人生はおたのしみ』までで一旦書き終えていたため、次の本のネタなど持ち合わせていなかったわけです。でもイベントに参加するには新刊のネタを考えなければならない。そこでなんとか、出来そうなものといえば、お題を変えた山月ちゅー本第二弾しかないな、と結論づけたわけです。
 嬉しいことに前回のちゅー本『恋はやたら素晴らしい』が好評で、喜んでくれる方が多かったのもあり、ちゅー本なら第二弾を作っても喜んでくれる人が多いのではないのかな、という淡い期待のもと、原稿執筆へと手を進めました。
 ただ、第二弾はコケる、とはよく言ったもので、第一弾が好評だった分、同じことを同じクオリティでやっても期待値を満たすとは限らないな、と考え、第一弾との差をどこに置くのか、その一点に配慮して原稿を執筆していました。前回(第一弾)はお題を「身体の部位別キスの意味」「十二ヶ月季節テーマ」でまとめましたが、今回は「場所」でお題をまとめようと決めました。「場所」お題にすることは、ちゅー本第二弾を書こうと決めた瞬間には定まっていたように思います。まず同棲設定の山月が、一緒に暮らしている部屋だったらどこでもどんなタイミングでも気にせず、ちゅーしたくなったらしてるといいな、という願望から始まっていたのですが、社会人設定の話だけでなく高校生の時間軸の話も入れた方が本として充実するよな、という考えから、学校のいろんな場所でちゅーする「高校生活編」とそれ以外のデート先の場所でちゅーする「高校生デート編」もつくろうと考えました。
 まず、頭の中にあった「脱衣所」のネタから試しに書き上げました。そこから、考えられる場所をとにかく書けるだけ全部書き出したリストを作り、それぞれの場所をお題にネタを考えていきました。おでこやほっぺなど、キスの部位を分けてしまうと第一弾と近くなってしまうため、敢えて全て口だけのキスに絞ってネタを考えました。また、内容が偏らないよう、視点、キスをする、される、どんな雰囲気か、についても気をつけながらネタを決めていきました。そのため、ネタが思いついたもの、すぐに書き出せる状態までネタが練り上がっているものから順に手をつけて書き上げていったのが実情です。
 また、前回のちゅー本の個人的テーマが「恋」だったので、今回は対照としてテーマを「愛」に定め、付き合って安定した時期の二人に限定してネタをそろえていきました。その結果、ただのバカップルの大きな事件も含まない日常の風景をまとめた短編集となったように思います。


【表紙・しおりカードについて】
 第一弾のカラフルな写真素材による表紙も「可愛らしい」と好評だったので、今回も出来ればカラフルな可愛らしい表紙イメージにしようと思いながら写真素材を探していきました。
 前述のとおり、前回のテーマが「恋」でタイトルにも「恋」と入れたのもあり、今回も出来れば「愛」の文字をタイトルに入れたいと長らく粘っていたのですが、結局これ、というものが見つからず、それに引きずられて表紙のイメージも固まらないままでした。ちなみに仮題(タイトル候補)は「愛はゆるく甘きもの」「愛は恋より出でて恋より甘し」でした。
 原稿の後半戦でスムルースの「バラ色ダンス」がイメージにぴったりだと気づき、その歌詞のうちのフレーズ「世界は僕と君のもの」をタイトルにしようと決めました。それと同時に、表紙の素材もバラにしようと思い、最終的にバラのブーケ写真を表紙画像に選びました。
 「恋」は緑や青といった爽やかさや涼しさ、紫といった魅惑もありますが、「愛」はまさにバラ色、甘い色だけ、といったイメージもこめ、こちらの画像に決めました。
 ちなみに、こちらの写真画像の下半分は本来ピンクの地の色ひとつだったため、私の手で白いレース画像2種を別素材から選び、組み合わせて隙間を埋めて完成稿としています。
 また、表紙と同デザインのしおりカードには、今回はバラの香水を吹きつけてあります。


【カバーについて】
 第一弾の文庫にお付けしたクラフト紙の手製紙カバーが好評だったため、今回も紙カバーをつけることにしました。前回は本のタイトルとサークル名HNの英訳を斜めに配置しただけのものでしたが、今回はちょっと趣向を変えて、全面デザインではなく紙そのもののクラフト地を生かしたデザインにしようと決めました。
 タイトルに「世界」と入れたので、モノクロの地球イラスト素材を使おう、と探し、その周りにまた英訳したタイトルとサークル名HNを配置しました。最初はそれだけで良いかと考えていたのですが、実際に原稿を作ってみると殺風景のように思え、下側に色味が欲しくなったため、黒地に白の反転抜き文字で同じ英文の文言を並べることにしました。


【収録順について】
 収録順を決めるにあたって、ふせん紙に各短編のタイトルとページ数、山月どちらの視点か、どちらがキスをする(される)のかについて情報を書き出し、実際にふせん紙を並び替えながら貼って、順番を決めました。これは第一弾でも収録順を決めるときにした作業でしたが、今回は前回より本数が少ないのもあり、あまり順番についての選択肢はなかったように思います。


【各収録作について】※収録順
(高校生活編)
1【教室】(執筆順3)(山口視点/山→月)
 カーテンに隠れてキスをする、というシチュエーションを前から書きたいなぁと思っていた。カーテンに隠れる理由として山月どちらかが追いかけられる状況、といったらこの形だろう、と決めて書いた。高校生活編の短編の中で一番最初に書いたものなので、今回の1本目をこれに決めた。
 特に記述はしなかったが、女の子3人は吹奏楽部のイメージで書いていた(が、今これを書きながら烏野に吹奏楽部がなかったことを思い出し、明言しなくて良かった……と息を吐いている)
 付き合ってしばらくした後の山口くんはちょっと余裕を持つようになって、厚かましさを持ち始めていると良いな、と個人的には思っている。

2【体育館】(執筆順11)(月島視点/山←月)
 ご褒美としてのキスはベタ中のベタだが、交渉するやりとりが書きたかったのと、結局山口くんに甘いツッキーが書きたかったので採用とした。さすがに先輩たちがいる場所でツッキーからちゅーはしないだろう、と考えた結果、少しややこしい状況説明が必要になってしまった。変人コンビはきっとバレーにしか意識がいってないだろうからアリ、という都合の良さは二次創作なので「良し」としていただきたい。

3【屋上】(執筆順24)(月島視点/山→月)
 屋上でお昼を食べてキスする山月を私は2冊目の「XXXからはじまるエトセトラ」の時点から書き続けているのだな、と先日読み返すきっかけがあった際に気づいて、自分でも笑ってしまった。
 第一弾が季節お題の本だったため、季節を明言しないように書くことに気を遣って、大変だった記憶がある。他愛もない日常会話が「昨日見たテレビの話」になりがちだが、実際この二人がどんなテレビ番組を見ているのか、まだ確信は持てていない。

4【体育用具倉庫】(執筆順9)(山口視点/山←月)
 受けの壁ドンの方が個人的には、攻めの壁ドンの何倍も刺さる。誰も居ない暗がりでのちゅーはそれだけでロマンを感じる。

5【階段】(執筆順4)(月島視点/山→月)
 収録順の妙で、「言い訳してる」とツッキーに言わせた次の話が、山口が言い訳をしまくる話になったことに気づいたのは入稿した後だった。高校生の好奇心はまぶしい、という話。

6【部室】(執筆順27)(山口視点/山→月)
 部室に山月二人きりになる状況とは、から始まり、キスする理由を考えた結果、寿命を延ばす話になった。キスすると寿命が延びる、のソースは某ホンマでっかな番組から。
 我ながら変人コンビのドタバタからの温度差がすごい話になってしまったと思うのだが、山月の日常としては有り得るのかな、とも思い、採用とした。意外にも、一番タイトルと本全体のテーマに相応しい中身の話になったのが書き手としては驚きのネタだった。

7【四階男子トイレ】(執筆順25)(月島視点/山→月)
 人気のないトイレに隠れて行為に耽る山月を書くのは三度目くらいになるのだが、今回が一番ねっとりした雰囲気になったように思う。「トイレ」というお題からネタを考える際に、過去に「隠れてキスをして何事もなかったように教室に戻った山月のツッキーが、馬鹿をやってるクラスメイトのいる教室の光景を目にして、『ここにいる自分以外の誰も、あの山口の表情も手つきについて知りもしないんだ』と思って優越感にほくそ笑んでいたら良い」と妄想したツイートを思い出し、今回採用にした。

(高校生デート編)
8【公園】(執筆順26)(月島視点/山→月)
 ブランコに乗ったままの相手にちゅーする山月が書きたい、と思い、手をつけたもの。他の話との折り合いで月島視点、山口くんからツッキーへ、の組み合わせになったが、実は確定するまでそれは二転三転していた。

9【水族館】(執筆順17)(山口視点/山←月)
 山月ふたりの行動圏内に水族館があるのかについては未知数だが、一応モデルとして仙台の水族館をいつも参考にして書くようにしている。ドチザメも実際大水槽にいるらしい。

10【試着室】(執筆順6)(月島視点/山←月)
 【教室】のカーテンとネタが被ってないかヒヤヒヤしながら書いていたが、ツッキーの隣に立って似合う自分になりたいと努力する山口くんを書きたい一心で形にした。ツッキーは洋服にこだわりがないけど、大概のものは似合ってしまうチートタイプだと個人的には思っている。

11【プラネタリウム】(執筆順13)(山口視点/山→月)
 山月に星とプラネタリウムが似合う謎はまだ解明されていないが、賛同をもらえているのも実感として確かではある。プラネタリウムの話のように見えて、帰り道の話も入れ子状態になっている美味しいとこ取りのネタ。

12【動物園】(執筆順22)(月島視点/山→月)
 動物の交尾に遭遇する、という状況を思いついたときは、当初哺乳類(ネコ科)を想定していたのだが、人気の動物となると近くに誰もいない状況は難しくなるだろうな、と思い、は虫類のコーナーに変更した。動物を決める際に、動画サイトでいくつか動物の交尾を録画した動画を視聴したが、想像以上に数があり、遭遇するのはそこまで珍しくないことなのだな、と背中を押された記憶がある。

13【駅のホーム】(執筆順12)(山口視点/山→月)
 駅のホームで通過電車の風を受けながらキスする山月が書きたかった。誰もいないホームに山月がいる状況を生み出すため、入れ込んだ設定にしてしまった、と反省している。
 ツッキーは人に見られるのが苦手、というより、知り合いに見られる厄介を避けたい、というタイプではないかと個人的には思っている。
 駅の描写は、過去に通勤で使っていたローカル線の駅の記憶を元に書いた。その駅は有人駅で、通過電車が多いわけではなかったけれども、田んぼに囲まれていつでも見上げればトンビが飛んでいる、そんな駅で、今回の舞台に合っていると思ったためイメージを拝借した。

14【砂浜】(執筆順14)(月島視点/山←月)
 砂山をつくる山口くんが顔を上げた瞬間にツッキーがキスする一瞬が書きたかった。書きながら、歴代の中でも1,2を争うくらい山口くんがおばかになってしまったのだが、浮かれているから、という雑な理由で納得していただきたい……。

15【遊園地】(執筆順19)(月島視点/山→月)
 観覧車のてっぺんでキスをするジンクスもベタ中のベタかと思うのだが、今回はそういうジンクスが好きそうな山口くんがまさかの未履修、というパターンで書いてみた。
 本の冒頭ページのタイトル下に出来れば観覧車のイラストを挿入したかったのだが良い素材が見つからず、断念した。

(社会人同棲編)
16【廊下】(執筆順23)(月島視点/山→月)
 やり返そうとしたツッキーが山口くんの純粋さに反対にやり返される、というパターンの話。「したいと思ったらキスする」宣言は、山口くんからツッキーへの宣言でもあり、読み手に対しての宣言にも使えるな、と思ったために、この収録順に据え置いた。

17【浴室】(執筆順7)(山口視点/山→月)
 同棲している山月の光景として、バスタオルを忘れた山口くんに渋い顔をしながらツッキーが届けに行く、という場面は象徴としてひとつあるな、と前々から思っていた。
 この話の時間軸の前にびしょ濡れの山口くんがリビングまで歩いて行った時に、きっとツッキーは山口くんの後ろをくっついて歩いて、フローリングの上に落ちた水滴を嫌みったらしく拭いてまわっていたんじゃないかと想像している。

18【玄関】(執筆順2)(月島視点/山←月)
 同棲、新婚ネタあるあるの「いってらっしゃいのちゅー」ネタ。
 山口くんは同棲しても、妙なところでツッキーに気を遣わない反面、妙なところで気を遣うんじゃないか、と思っている。
 同棲日数を重ねるほどに、ツッキーの、山口くんの扱い方が上手くなっていくといいな、と思う。

19【脱衣所】(執筆順1)(月島視点/山←月)
 ちゅー本第二弾を作るきっかけになったネタで、2月のイベント終了時点でほぼ構想はできあがっていたもの。ふざける山口くんと、それに乗っかって一緒にふざけるツッキーの話。

20【ベランダ】(執筆順15)(月島視点/山→月)
 ツッキーは火事に対してマメなタイプ、山口くんはムラッけがあってやるときはやるけど基本溜め込むタイプ、と妄想している。また、山口くんは反省はするけど引きずらないタイプ、というのも合わせて今回の話になっている。同棲して数年経った山口くんはツッキーの機嫌をとるのが世界で一番上手くなっていると良い。

21【キッチン】(執筆順8)(山口視点/山←月)
 2017年のツイートで「ツッキーがオムレツ焼いてる時の横顔が一番ちゅーしたくなる、って思ってほっぺにちゅーする山口くん良いな…それで短く『邪魔』って起こるでもなく単に諫める感じで口にするツッキーとか、そういうイチャイチャしてる感じ、すごい萌える…」と語っていたことを思い出し、該当ツイートを検索した上で今回のネタを作った。
 前述の通り、今回は全て口にするキスに統一したかったため、ほっぺちゅーは変更となったのだが、書きたかった雰囲気は再現出来たので個人的には満足した。
 オムレツを焼く描写をなるべくセクシーにしようと頭をひねりながら書いた記憶がある。

22【寝室】(執筆順18)(山口視点/山←月)
 全年齢本のため、直接的な表現は避けたのだが、結果として、遠回しにこれは山月本ですよ、と主張する話になった。山月には腕枕より肩枕をしてよりくっついていて欲しい、という願望があります。



【ペーパー、差し入れ、おまけについて】
 普段は新刊原稿を終えた後に、改めてネタを考えて執筆するのだけれど、今回はおまけまで全て賄える本数を書き上げた後、新刊収録以外の話をチョイスして引き抜こうと決めていた。おまけは各編1本ずつ、計3本用意すれば良いだろう、と最初から考えていたため、全部で27本用意できれば、新刊に22本、その他で5本と調整出来るな、と確信していた。

ペーパーSS【昇降口】(執筆順21)(山口視点/山←月)
 最も文字数が少なく書き上がったためペーパーに決めた。2000字以内であれば、新刊と同じ文庫サイズのペーパーに出来る利点もあったため。また、今回の話の中で唯一、ツッキーがかっこいい話だったため、新刊にまとめるより別に出した方が良いと判断した。【教室】の呼び出しに不安がる山口くんとネタが若干被っているのも理由のひとつ。
 かっこいい受と、受をかっこいいと思っている攻が好きなので。ただ、月受けオンリーという、ツッキーを可愛いと思っている人が多いイベントで出すペーパーのネタとして良いチョイスだったのかについては、反省すべきところではある。

差し入れSS【リビング】(執筆順20)(山口視点/山←月)
 同棲ネタであるあるの、冷蔵庫のプリンによる喧嘩を参考に考えたネタ。差し入れのお菓子に、ご当地お菓子屋のゼリーを選んだ瞬間、詳細が決まった。

おまけ@【帰り道】(執筆順10)(山口視点/山→月)
 植え込みの影に隠れてキスする山月が書きたかった。テスト期間で久しぶりであること、ツッキーが山口くんの考えを見透かしてキスの提案をすること、物陰に隠れてすることなどなど、他のネタと要素が被りすぎているため、おまけとなった。

おまけA【映画館】(執筆順16)(月島視点/山→月)
 映画館に行く山月を過去にも書いたことがあるのだが、今回は映画を見ながらちゅーをさせたい、と思いこんなネタになった。悪知恵が働く山口くんを書きたかったのだが、あまりにも狡猾すぎたのと、ツッキーが機嫌を損ねた結果になったため、おまけにした。

おまけB【洗面所】(執筆順5)(月島視点/山←月)
 洗面所の前に並んで立ち、鏡の中に一緒に映り込む山月の様子が書きたかった。結果としてほっぺにちゅーになってしまったので、おまけにすることに。
 山口くんがツッキーにちゅーされて喜ぶだけでなく、「もっと違うときにしてよ」と文句が言えるようになるのは、かなり付き合って年数が過ぎた後なんじゃないかと思う。



【さいごに】
 山月二人に対して、折に触れて「とにかく山月は幸せであって欲しい、幸せで、くすぐったくて、理由もないのにたまらなくて笑ってしまう、みたいな二人であって欲しい」と思っているため、それを形にしたいと思いながら今回の本をつくった。その結果、ねらい通りと言うべきか、とにかくあっちでもこっちでも笑っている場面ばかりの短編集になったように思う。「恋」の「キュン」とは少し変容してきていたとしても、山月二人の「愛」に満ちた距離感では、ゆるく甘くとろけた幸せが広がっていると良いな、という願いをこめた(つもり)
 読んだ人が、山月ふたりの笑顔につられて、笑顔になってくれたら良いな、と今は願うばかりです。