ツッキーと二人、電車に揺られて近くの映画館へ向かっていると、いろんな会話を耳にする。それはもちろん一緒に乗り合わせた人たちの会話であって自分には関係のない話なのだけれど、ヘッドホンをして眠っているツッキーに話しかけることもできない時は、良い気晴らしになる。
隣に座っている他校の制服を着た女子高生二人組は、分厚い雑誌を広げてページを指さしながら楽しげに話をしている。平日の夕方の電車には、こうした学校帰りの高校生をよく見る。教室で目にするクラスの女子の休み時間の様子と重なるその姿に、どこの高校の女子も似ているんだなぁ、なんて思う。
雑誌のページに印刷されているのはテレビでも毎日よく見かけるイケメン俳優で、女の子二人はその俳優を指さしてはきゃあきゃあ騒いでいる。
「ほんとカッコいいよね」
「このシャツ、すごい似合ってるよね」
「イケメンは何着ても似合うからすごいよね」
顔を動かさないまま、隣で広げられている雑誌に目を落とす。確かに人気の俳優だし不細工ではないと、男の俺でも思う。でも写真の中で着ているデザインシャツは、似合ってないことはないけれど、そこまで騒ぎたくなるほど着こなしているようには見えない。
雑誌から目を離し、今度は隣で目を閉じてヘッドホンをしているツッキーの横顔を盗み見る。今目にしたばかりのデザインシャツを頭の中でツッキーに想像で着てもらう。黒と白の切り替えしが、すらりとしたツッキーの体にぴったりだと思えた。
ちょっと大げさかもしれないけれど、有名人のイケメン俳優より、ツッキーの方が何倍も似合うんじゃないか。頭の中に浮かんだ考えに、反射的に顔の筋肉が緩む。
「かっこいいよねー」
再び盛り上がる女の子たちの手元に目線を戻す。見れば、今度はイケメンで売れているモデルの写真が見開きで印刷されたページを指さしている。黒の中折れ帽子をかぶり、指にシルバーの指輪をはめた男のモデルは、カメラごしにこちらに向かってニヒルに笑っている。
もう一度隣に座るツッキーに視線を向ける。帽子も、指輪も、ツッキーが身に着けた方が何倍もかっこよく思える。隣で浮かれている女の子たちの声から耳をそむけ、頭の中でオシャレになったツッキーを鮮明に描き出す。
「ツッキーの方が何倍もかっこいい」
耐え切れずに、ふふ、と笑うと、眠っていたツッキーが瞼を開け、薄目にこちらを見た。俺に視線を合わせたツッキーの目が、呆れた色に染まっていく。
「今、へんなこと考えてたでしょ」
「そんなことないよ」
「絶対うそ」
ため息をついたツッキーの表情を見るかぎり、そこまで怒っているようではなさそうだった。俺は顔を前に戻し、一人目を細めた。自分の隣にいる友達がこんなに素敵でかっこいいなんて、自分はなんて幸せ者なんだろう。胸にあふれた、くすぐったい気持ちをこらえきれずに肩を震わせると、目を閉じたままのツッキーに強く肘で小突かれてしまった。