何年かぶりに出した三十八度の高熱で久しぶりに寝込んだ。せっかくなら授業のある時に休むきっかけにしたかったけれど、たまたま休みの日にあたって損した気分になった。仕方がないからベッドの中で大人しく寝てすごそうと、のん気に思っていたらだんだん体調が悪くなって世界がふわふわ揺れているような、変な気分になっていった。
 今が何時で、昼なのか夜なのか、熱いのか寒いのか、頭がぼんやりしだしてよくわからなくなった時、遠くの方でインターホンのチャイムが鳴らされる音がした。一瞬気のせいかと思ったけれど、少しの間をおいて二回目が鳴ったから、空耳ではなかったみたいだ。
 起き上がろうと思って体に力をこめたら、関節のあちこちが痛くなって、ぐるりと世界が頭の中で回った。ヤバい、と思ったのと同時に、体はマットレスに深く沈んでいった。そんなにひどくなってたんだ、と今の自分の状況を笑ってしまいそうになる。
 こめかみのあたりがじんじん痛んで、それがひどく気になって五感が鈍っていくのがわかる。チャイムの鳴っている玄関がすごく遠い場所のような気がする。耳の中に水が入った時のような気持ち悪さが広がっていく。遠くでドアの開けられる音がして、誰かの足音が近づいてくる。鉄のかたまりみたいに重たいまぶたを一生懸命こじ開ける。部屋の入り口で止まった足音に目を向ける。熱い息が胸からこぼれ落ちる。
「ツッキー……?」
 片手にコンビニのビニル袋を提げたツッキーが、こっちを見ていた。なんでツッキーがいるんだろう。そんなことをぼんやり考えていたら、朝まだ頭がすっきりしていた時にメールで風邪をひいたと話していたのを思い出した。でもまさか、ツッキーがそれだけの理由で来るわけがない。きっとこれは夢なんだ。俺は熱にうかされた息苦しさに、目を閉じた。
 こんな夢を見るほど悪化してるんだ。自分の都合の良い脳みそに苦笑いを浮かべたとき、おでこにひやりと冷たいものが触れた気がした。目を開けるとツッキーがそばにいて、その右手を俺のおでこの上に載せていた。
「熱っ……」
 顔をしかめながらツッキーが手をひっこめる。夢にしてはリアルすぎるその反応に、俺は自分の記憶力をほめたくなる。ツッキーの仕草は全部目に焼き付けているけれど、こんなにリアルな夢は久しぶりだ。
 ツッキーは手にしていたビニル袋をベッドの横の机の上に置いて、中から冷えピタとポカリのペットボトルを取り出した。黙って透明なフィルムをはがす、その長い指に見とれていると、おでこに冷たい感触が乗った。頭の中に鳴り響いていた、じんじんという振動がすぅっと弱まる。
 はい、と手渡されたペットボトルを受け取るために、ベッドの中から右手を上げて手を広げたけれど、うまくつかめずに布団の上にボトルが転がり落ちた。
「あ……ごめ、」
 ごめん、と言ったつもりが、声がうまく出ない。ツッキーはボトルを拾い上げてキャップを開け、コンビニ袋の中から出したストローを差した。しびれる口先に何か固いものが触れて、反射的に口に入れたら、ストローの先だった。早く、と言うツッキーにうながされて、ひと口ふた口なんとか飲み込む。ただそれだけのことなのに、ひどく疲れて、俺はぐったりしてしまった。
「馬鹿は風邪ひかないって、誰が言ったんだか」
 あきれたようにため息をついたツッキーの独り言が耳に入ってきた。薬は飲んだのかと聞かれた気がしたので、ゆっくり首を横に振った。続けて、何か食べたのかと聞かれた気がして、同じように首を振ったら、大きなため息が聞こえてきた。
 さっきまでのぐるぐる回っていた頭の中が落ち着きを見せて、息が楽になったような気がする。ツッキーはまだ隣にいるのかと確認して、ツッキーのあきれ顔がすぐそばにあって急に安心した。なんていい夢なんだろう、と気が緩んで、つい、
「ツッキーがちゅーしてくれたら治る……かも」
 明らかにツッキーの眉間に深いシワが刻まれたのが、ぼんやりした視界でも見えた。さすがにそれは夢でもダメなんだ。少し残念な気持ちを誤魔化すように笑いがこぼれ落ちる。
 全身の気力を使って声を出したせいか、少し軽くなったはずの体がまた重たくなった。ぐるり、と頭の中の天地がひっくり返りそうになる。ぎし、とベッドのきしむ音がして薄目を開ける。俺の右肩の横にツッキーの手がついて、目を上げると、ツッキーの顔が至近距離にあった。え?と一瞬時間が止まったような感覚がして、ほっぺにくすぐったさを覚えたと同時に、ちゅ、と耳元で音がした。
 思考が鈍って、いまだに何が起きたのかわからないままの俺の顔をのぞきこんだツッキーの目と目が合って、
「感染されるのは絶対嫌だから」
 早く治してくれないと困るし、と文句の言い回しで付け加えられる。俺から離れたツッキーの頬は少し赤くなっていて、必死にそれを隠そうと無表情を続けているのが鈍くなった頭でも、なんとなくわかった。俺の頭の中はますます沸騰しそうになって、それが熱のせいなのか、はたまたツッキーのせいなのか、もう区別なんてつけられそうにもなかった。
 頭を動かしたらますます熱が上がりそうで、俺はすべての思考をストップさせた。ただ、右手のそばにツッキーの左手があったから、そっと握ることにした。冷たいツッキーの手がそっと握り返してくれて、すぅっと眠りの世界に引き込まれるのが分かった。




「#エロ描きたいけどどこか勇気が出てこないから1RTされたらほっぺにチュウで5RTされたらベロチューで10RTされたら服脱がせて20RTされたら愛撫させて50RTされたらここ1ヶ月まれに見ない体位で描いて100RTされたら人生最大級の本気出してドえろを描く」
というついったーのハッシュタグによるもの