目が覚めたら隣にツッキーがいた。俺が寝ていたベッドの中でまるまって、目を閉じている姿に驚いたのはもちろんだけど、身につけている洋服がどこからどうみてもゴスロリってやつに見えた。真っ黒なワンピースのそで口には何枚ものレースがついていて、ツッキーの頭には大きなひらひらしたリボンがつけられていた。まるで人形みたいだ、とみとれているうちに、その白い瞼が震えて静かに開いた。
 起き上ったツッキーのスカートからのぞいた太ももはすらりとしていて、黒くて長い靴下が太ももの真ん中まであげられて、その端はサスペンダーみたいなベルトでスカートの中に繋がれている。目で追ってしまった罪悪感で、とっさに目をそらす。
「山口……?」
 寝ぼけたツッキーの声がした。俺はやっぱりツッキーなんだと思って、一瞬だけ視線を戻す。ツッキーは大きなあくびをして、頭の上のリボンを揺らしていた。大きく開いた胸元はサイズがあっていないのか、薄い胸から浮き上がってみぞおちまで薄そうな皮膚をさらしている。きっと女物なんだろう。
「俺じゃないよ、別に俺は何もしてないよ、俺を信じてツッキー」
「別に着たくて着ただけだから」
 肩越しに聞こえた返事に、自分の耳を疑った。まさか、と思って振り返る。絶対険悪な顔で冷めた目をしていると思ったツッキーの顔は、意外にも眠そうなだけで、とても穏やかなものだった。
「今、なんて……?」
 困惑した頭でなんとか絞り出した言葉に、ツッキーは楽しそうに微笑んだ。
「山口が喜ぶだろうと思って着た、それのどこが変なんだよ?」
 さも俺の方が間違っていておかしなことを言っている、と言いたげな調子で返された言葉に、俺は唖然とした。確かに嬉しくないと言ったらウソだけど、何かが変だ。ツッキーが、まさか、そんな。そうだ、もしかしたらこれはドッキリかもしれない。部屋の壁のすみからすみまでを見渡していると、ツッキーが俺の寝巻の裾を二回小さく引っ張った。
「何をしたら良い?それとも脱いだ方が良かった?」
 頭の中がはじけてしまいそうになるのをこらえる。全身の筋肉に力をこめて自分を押さえつける。そんなの絶対だめだ、こんなのやっぱりおかしい。
「脱ぐのは、だめ」
力のこもった唇が発した言葉は心とはうらはらなものだった。ツッキーは、そうかとうなづいて足のベルトにかけていた指を離した。かと思ったら、じゃあ、と短く発してベッドの上に立ち膝の姿勢になると
「これは?」
と俺の目の前でスカートの裾をまくりあげた。そこには予想以上に肌色が広がっていて、俺は反射的に顔をそらした。山口?といぶかしげに俺を呼ぶ声はやっぱり耳なれたツッキーのもので、どんどん頭の中がしっちゃかめっちゃかになっていく。こんなツッキーは嘘だ。こんなツッキーはおかしい。ぎゅっと目を閉じると、真っ暗な空間に落っこちていくような感覚がした。

 嘘だ、と唇が紡いだ瞬間、視界が明るく開けた。目に映ったのは見飽きた自分の部屋の天井だった。ベッドから見上げた時にいつも目にするその天井の模様に、全てを察した。と同時に自分の脳みそを責めた。あんなことを夢に見るなんて。
 ため息をついて通学路を歩いていると、何度も瞼の裏にツッキーのあの姿が映り込んできた。掻き消すようにぶんぶんと頭をふる。
「山口?」
 あっ、と驚いて短く声を発すると、現実のツッキーが首をかしげて隣に立っていた。その姿をまじまじと見て、また夢じゃないよな、と心配になっていたら、大きくゆがんで睨まれた。
「何だよ、人の顔をじろじろ見て」
その冷たい言葉に、俺はホッとして泣きそうになった。崩れそうになる体を必死に支えていると、自分でもわけがわからないまま声が出た。
「ゴスロリなんて着ないよね?」
「はぁ?」
「いいんだ。やっぱりツッキーはツッキーだよね」
 ははは、と笑う俺を見て、しばらくツッキーは何かを考えているようだった。少し学校に向かって並んで歩いていると、不意に「着たい」とツッキーが言うので、驚きのあまり膝から崩れ落ちそうになった。ツッキーは俺の顔を横目に見て意地悪そうに
「って言うわけないだろ」
とつけ加えてみせた。そうだよね、と俺の頭は安心しきってふやけてしまいそうになった。
他愛もない話を始めたツッキーの横顔を見ていると、あんな夢をすぐに見破れなかったことが情けなくなった。でも心のどこかで、あの夢の続きは、一体どうなるんだろう、なんて一瞬でも思ってしまった。







ついったーのRTされたら○○なキャラ描くったーによる結果から。
「あなたは4RTされたらゴスロリ服の月島蛍、7RTされたらバニーガール姿の月島蛍、13RTされたらロリ服の月島蛍を描きましょう。」